情報通信
株式会社出前館
営業スタイルの標準化で加盟店舗を増やす
山梨県南アルプス市に本社を置く企業「ジット」は、以前から営業活動の属人化に悩んでいた。営業の活動状況が顧客情報と紐付けて管理されていない上、営業活動を共有するプラットフォームも存在しない。その状況から脱却すべく導入されたシステムが「UPWARD」だ。その導入効果について、取締役副社長・営業本部長の石坂氏と営業本部・営業管理課・主任のタン ジェスリン氏にお話を伺った。
取締役副社長 営業本部長
石坂 幸太郎
営業本部 営業管理課
タン ジェスリン
営業本部 営業管理課
塩島
ジットは、プリンター用インクカートリッジの製造・販売やレーザープリンター用再生トナーカートリッジの販売、OAサプライの企画販売などを行っている企業。社名の由来である「Just In Time」に違わず、「その時代、時代に必要な製品・サービスを必要な人に、必要なだけお届けする」ためにさまざまな事業を展開している。
「当社のメインビジネスは、プリンタ用インクカートリッジのリサイクルカートリッジの製造販売です。山梨県南アルプス市に工場を持ち、メイドインジャパン品質の製品を提供しています。生産から販売まで国内だけで完結するため、市場ニーズに応えた製品をスピーディーに提供できる点が当社の強みになっています」と取締役副社長・営業本部長の石坂幸太郎氏は語る。
ジットは、札幌、仙台、新潟、東京、名古屋、大阪、福岡、沖縄に営業拠点を設置。営業部員は、ホームセンターやスーパー、家電量販店など全国8,000店舗の顧客を訪問するだけでなく、ラウンダー(※)としても活躍している。
※ラウンダーとは、自社製品の陳列状況やディスプレイなどのアドバイスをする「棚づくり」をはじめ、POPや什器などの作成・設置など、店頭プロモーション全般を担うスタッフのこと。
「当社の課題は、情報を共有するプラットフォームがなかったこと。そのため、営業部員が作成した日報を営業管理課のメンバーが手作業でまとめなおすというような作業が発生していました。また、店頭プロモーションの情報共有も困難でした。個々の営業部員はExcelやLINEなどを使い情報共有を試みていたのですが、それらは一過性でナレッジとしては残りません。結果として営業部員の活動が属人化していました」と石坂氏。
そこで同社は、営業活動を共有するプラットフォームの構築を検討。情報共有基盤として、グループウェアを導入してみたが、なかなか定着しなかったという。
「使い方が分からないスタッフや、パソコンでの入力に拒否感があるベテランスタッフなどに対し、教育を徹底して使用を促すことができませんでした。グループウェアを推進するコアメンバーが不在だったこともあり、結果として使われなくなってしまいました」と石坂氏。
その反省から、営業本部・営業管理課・主任のタン ジェスリン氏と塩島氏をコアメンバーとし、営業部員すべてが使用できる使い勝手のいい情報共有基盤を探すことにしたという。
「営業活動を共有するプラットフォームがあればと思い、展示会などに通い情報を収集。よさそうなソリューションを見つけては、各社に問い合わせるなどしてソリューションの検討をしました」とタン氏。
そうして導入を決めたのが顧客管理(CRM)ソリューションを中核としたクラウドサービス「Salesforce」と、活動管理ツール「UPWARD」だ。
UPWARDは、各営業メンバーが保有する営業方法や顧客課題をリアルタイムで報告できるソリューション。スマートフォンやタブレット、パソコンなどに対応しており、訪問先や現場から、顧客や商談の情報などをいつでも入力できる。
「定着させるため、紙での管理を禁止したり、営業会議や勉強会などを実施したりして浸透を図ってきました。その活動が実を結び、『UPWARDを使えば、活動報告が楽になり報告時間が短縮する』ということを実感する営業部員が増えていきました。そうして、属人化していた営業活動から脱却できました」とタン氏。
また、同社ではUPWARDで報告した活動情報を自動で社内SNSに投稿できる仕組みを構築したことで、現場での店頭プロモーション写真をはじめ、顧客訪問の情報を全国の営業部員にリアルタイムで共有することが出来るようになった。「現場で分からないことがあっても、すぐに問い合わせられることから、リアルタイムで上司や同僚からアドバイスできるようになりました」とタン氏は続ける。
さらにUPWARDは、最近訪問していない顧客や優良顧客など最優先でアプローチすべき顧客情報を地図上で可視化することが可能。現在地から訪問先までの移動ルートや手段をナビゲーションしたり、現在地付近の地図から周辺情報を検索したりする機能が備わっている。これを活用することによって、営業活動の効率化や生産性向上が促されたという。
「地図上からお客様や訪問先を検索できるのは非常に便利です。これまでは、ホームセンターA社、家電量販店B社など、お客様グループごとにリストを作成し、訪問してきました。そのため、ホームセンターA社と家電量販店B社が隣接しているような地域でも別々の営業部員が訪問していたのです。UPWARDを使えば、こういった問題もすぐに解決できます」(石坂氏)
同社はこれまで、顧客企業ごとに担当者を付け営業活動を展開してきた。そのため、非効率な営業活動を余儀なくされていたのだ。UPWARDでは、Salesforceに登録している顧客情報を地図上から確認できるため、隣接する顧客を検索し、訪問できるようになる。この機能を使うことで、営業部員が効率よく訪問できるようになったという。
「たとえ担当地域外であっても、地図を見れば最適なルートで訪問できるようになります。こうしたことが功を奏し、UPWARD導入後、営業部員の訪問店舗数が確実に増えています」(タン氏)
UPWARDの導入効果は高く、その成果は企業成長にも寄与している。
「売り上げが毎年2桁成長しています。訪問数が増加したことに加え、効果があった店頭プロモーションを他の店舗で展開することが容易になったためでしょう」(石坂氏)、とのこと。
同社の伸張は、顧客の売り上げ増にもつながっており、効果がでている顧客からの信頼も獲得している。
「中には、他社製品も含めた『棚づくり』まで任される営業部員も登場し始めています。棚全体を任せてもらえると、提案のランクが一つ上がります。これは当社にとっても非常に大きい効果です」と石坂氏。
さらにUPWARDを活用し、情報共有が進んだことで、営業部員の意識にも変化がでている、という。
「UPWARDの情報は社内SNSで共有されるため、スタッフ同士のコミュニケーション が活発になり、遠方のスタッフとも“横のつながり”を築くことができました。営業部全体のモチベーションアップにも繋がっており、非常にいいサイクルができあがったと思います。またコミュニケーションが活発になったためか、離職率も大幅に下がっています。これもUPWARDの効果の1つだと思います」(タン氏)
「SalesforceやUPWARDは、営業部隊だけが使っています。しかし、その効果の高さは実証済みです。今後は、本社まで広げ、業務や生産現場、品質管理、コールセンターなどと紐付けて情報を一元管理できればと考えています」と石坂氏。
こうすることで、クレームに関する情報を営業部員が後追いする、という環境も作ることができるようになる。情報共有基盤を構築することで、同社の強みを更に強化することに繋がるだろう。
UPWARDはフィールドセールスの訪問活動を支援するソリューションだ。簡単な情報入力と活動の可視化で、営業部員のパフォーマンスを上げ、営業チームの組織力を高める。ジットの事例は、まさにそれを体現したものといえよう。今後の展開にも注目が集まる。